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音

ホワイトノイズで集中できる?効く人と下がる人の研究

公開 ・Deep Flow Space 編集部

「シャー」という音を流しながら作業すると集中できる。ホワイトノイズについて、そんな紹介をよく見かけます。アプリも、専用のノイズマシンもあります。この記事は、ホワイトノイズを試すかどうか迷っている人に向けて、研究で分かっていることを並べたものです。

先に答えを書きます。ホワイトノイズやピンクノイズの効果は、人によって向きが分かれます。研究のまとめでは、注意がそれやすい傾向の人では成績が小さく上がり、その傾向がない人では小さく下がりました。誰にでも効く音、という結果ではありません。

研究のまとめで分かったのは「向きが分かれる」こと

柱になるのは、Nigg らが2024年に発表したメタ分析です。ホワイトノイズやピンクノイズを流したときの課題の成績を調べた13の研究、合わせて335名分をまとめて分析しました。

結果は2つに分かれました。

研究どうしの結果のばらつき(異質性)は小さく、出版バイアスも見られなかったと報告されています。根拠の強さは A です(複数の研究をまとめた分析で、結果が一貫している)。

Deep Flow Space の根拠表でも、この効果は「小さい」と扱っています。上がる側も下がる側も、大きな変化ではありません。それでも、向きが逆になるという点は大事です。「みんなに効く」とも「誰にも効かない」とも言えない、ということになります。

この研究の理論的な土台としては、Söderlund らの2007年の論文が挙げられています。

対象は子どもから大学生の年代

外せない条件が2つあります。まず、まとめられた研究の参加者は、子どもから大学生の年代でした。社会人の成人は対象に入っていません。

在宅で仕事をする30代や40代に、同じ大きさ・同じ向きで当てはまるかは、確かめられていない状態です。Deep Flow Space の根拠表でも、この項目は「若年層のメタ分析で A。成人は未確認」と分けて書いています。

次に、効果は小さい。「ノイズを流したら作業がはかどるようになった」という感覚が、この研究の数字と同じものかは分かりません。研究が測っているのは、決められた課題の成績です。

注意がそれやすい傾向とは

ここでいう「傾向」は、病気の名前ではありません。研究では、注意のそれやすさを尋ねる自己記入の質問票が使われています。そうした質問票の一つは、世界保健機関の作業部会が作った6項目の短いもので、診断ではなく、ふるい分けのための道具と位置づけられています。

日常の言葉にすると、たとえば次のような感覚です。

当てはまるかどうかは、この記事では判定しません。言えるのは、この傾向が強い人のほうがノイズの恩恵を受けやすく、弱い人はむしろ下がる方向だった、という研究の結果までです。

ホワイトノイズとピンクノイズ、ブラウンノイズ

検索すると、ホワイトノイズのほかにピンクノイズやブラウンノイズという言葉も出てきます。

Nigg らのメタ分析は、ホワイトノイズとピンクノイズの研究を合わせて扱っています。この2つのどちらがより効くか、という比較は、根拠表の範囲では確認できていません。

ブラウンノイズも「集中に効く」と紹介されることがあります。ただ、上のメタ分析では、ブラウンノイズを使った研究は1本も見つかっていません。根拠の強さは D(研究なし)です。効かないと分かったわけではなく、調べられていない、という状態です。

周りの音を覆い隠す、という使い方

ノイズの解説では、「マスキング」という言葉もよく出てきます。一定の音を流して、ほかの物音を目立たなくする考え方です。

オフィスの音響の分野では、サウンドマスキングという方法が使われています。周りの話し声を聞き取りにくくして、邪魔を減らすのが目的です。この使い方には、オフィス音響の研究と国際規格(ISO 3382-3)の指標があり、根拠の強さは B です。

なぜ話し声なのか。Vasilev らが2018年に65の研究をまとめた分析では、意味の分かる話し声は、読解を最も大きく下げる音の一つでした(強さ A)。邪魔の大きさは、音量よりも「言葉として聞き取れるか」で決まると報告されています。話し声がどれくらい聞き取れるかを STI という指標で表すと、0.5 を下回ると邪魔が急に減り、0.20 を下回るとほぼ消える、というモデルもあります(Hongisto のモデル。強さ B)。

ここで2つの話を分けておくと、迷いにくくなります。

周りがもともと静かなら、マスキングで覆う音がありません。その場合に残るのは前者の話だけで、傾向がない人では下がる方向の結果でした。

静かさを作る道具と、音を足す道具

周りの話し声が気になる場面では、音を足す前に、音を減らす道具も選べます。

Deep Flow Space の根拠表では、読む・書く作業の既定を「周りの話し声を聞き取れなくする」としています。個室やブース、吸音パネル、耳栓や遮音イヤーマフがその手段です。ノイズキャンセリングのヘッドホンは、低い音には強い一方で、話し声のように変化する音には弱い可能性があります(強さ C)。一般向けの製品で話し声がどれだけ減るかを測った研究は、見つかっていません。

音に敏感な傾向も関係します。騒音への感じやすさが高い人ほど、話し声の邪魔や集中のしにくさを多く訴える、という調査があります(強さ B。成績への影響の大きさは未確認)。この傾向がある人は、遮音や吸音を先に考える順番が根拠に沿います。

作業の種類と、カフェのざわめき

ノイズの話は、作業の種類でも少し変わります。

アイデアを出す作業では、Threadgold らが2019年に報告した研究があります。図書館の雑音を流した条件では、ひらめきが必要な言葉の課題の成績は下がりませんでした(1本の論文で3つの実験。強さ C)。また、Mehta らの2012年の研究では、50dB より 70dB 程度のざわめきで創造的な課題の成績が上がり、85dB では下がったと報告されています(5つの実験。強さ C)。ただし独立した追試は確認できておらず、Threadgold らの結果とも方向が一致しません。

カフェ程度の雑音は「試してよいが、効果は未確定」という扱いになります。

音楽や自然音とは、何が違うか

作業中に、音楽や自然音を流す人もいます。ここも、研究ごとに分けて読むと整理しやすくなります。

背景音楽については、Kämpfe らが2011年に研究をまとめて分析しました。全体を平均すると効果はほぼゼロでした。ただし中身は、読解を下げ、記憶を少し下げ、気分は上げる、という打ち消し合いでした(強さ A)。

歌詞のある音楽は、Vasilev らのまとめで、話し声と並んで読解を最も大きく下げる音でした(強さ A)。言葉を含む音は、読む作業と同じ処理を取り合う形になります。ノイズには言葉が含まれません。ここが、歌詞のある音楽との大きな違いです。

鳥の声や水の音などの自然音は、集中よりも落ち着きの面で調べられてきました。36の研究をまとめた報告では、ストレスや不快感が下がる方向の結果が出ています(Buxton ら 2021、強さ B)。ただし、この数値は報道をもとにしたもので、論文の本文は確認できていません。また、多くはヘッドホンで短い時間聴く実験でした。

並べると、作業の最中は言葉を含む音を外す。静かすぎて落ち着かない人はノイズを短く試す。休憩や作業の前に落ち着きたいときは、自然音や好きな音楽を聴く。こうした分け方が根拠に沿います。

試すときの順番

ここまでの研究を並べると、ホワイトノイズの置き方はおおよそ次のようになります。

場面ノイズの扱い根拠の強さ
静かすぎると集中が続かない短い時間で試す価値がある。効果は小さいA(若年層)/成人は未確認
その傾向がない足さない。下がる方向の結果A
周りの話し声が気になる遮音・吸音を先に。覆う手段としてマスキングA(話し声の害)/B
アイデア出し雑音は試してよい扱い。効果は未確定C
ブラウンノイズを使いたい研究がまだ無いD

効果が小さく、人によって向きが変わる以上、自分に合うかは自分で比べるしかない部分が残ります。同じ作業を、無音の日とノイズを流す日で比べてみる。そうした記録が、研究の平均よりも手がかりになることがあります。

よくある質問

ホワイトノイズは誰にでも集中の助けになりますか

研究のまとめでは、そうなっていません。注意がそれやすい傾向が強い人では成績が小さく上がり、その傾向がない人では小さく下がりました(Nigg ら 2024、強さ A)。対象は子どもから大学生の年代で、社会人での結果は確かめられていません。

ブラウンノイズのほうが集中に向いていると聞きました

ブラウンノイズを使った研究は、上のメタ分析では1本も見つかっていません(強さ D)。効く・効かないのどちらとも言えない状態です。ほかのノイズの結果を、そのままブラウンノイズに当てはめる根拠もありません。

ノイズキャンセリングのヘッドホンでホワイトノイズを流すのはどうですか

ノイズキャンセリングは低い音に強く、話し声のような変化する音には弱い可能性があります(強さ C)。話し声が気になるなら、耳栓や遮音イヤーマフなど耳をふさぐ道具と組み合わせる考え方があります。ノイズを流すかどうかは、前の質問と同じく、その人の傾向で向きが分かれます。

音を足す前に

ホワイトノイズは、効く人と下がる人に分かれる音です。周りの話し声を覆う使い方と、ノイズそのものが注意を支える使い方は、別の話として考えると選びやすくなります。

自分の作業や時間帯、音への感じ方によって、合う音の環境は変わります。いくつかの質問から、それらに合う環境を根拠の強さ付きで整理する診断は こちら にあります。

出典